
課題
フランスの自動車OEMは、ワイヤーハーネスと内装部品を東欧のサプライヤーから調達していました。現地の人件費は上昇を続けていました。さらにパンデミックは、長い内陸サプライラインがいかに脆弱かを露わにしました。そこで同OEMは、代替調達先としてモロッコのタンジェ自由貿易区の評価を始めました。ワイヤーハーネスは大部分が手作業で組み立てられるため、賃金水準が部品単価に占める割合が大きいのです。
争点は価格ではなくスピードでした。部品はタンジェを出発してから48時間以内に、スペイン・サラゴサの組立工場へ到着しなければなりません。ジャストインタイムのラインは、数週間分のバッファではなく数時間分の在庫しか工程脇に置きません。JITラインでトラックが遅れても、後から取り返せる仕掛りが積み上がるわけではありません。ラインが止まり、後工程のすべてが一緒に待つことになります。
同OEMの既存の物流パートナーは、この輸送を外航コンテナ輸送として見積もりました。その内容は、タンジェ・メドからバルセロナまで海上7日、さらに内陸で2日というものです。9日はJITのスケジュールではなく、調達リードタイムの数字です。コンテナ経路では、両端でターミナル荷役と港での滞留も加わります。結局、時計を刻むのは工場ではなく本船の配船頻度になってしまいます。
第二のリスクは関税でした。モロッコ製の部品は、EU・モロッコ連合協定のもとで0%の税率でEUに輸入できます。しかしこの税率は自動的に適用されるものではなく、企業単位で一度承認されれば済むものでもありません。適用は、貨物ごとに原産地証明が付いていることに依存します。書類を誤れば部品は関税付きで到着し、調達を移した理由そのものが消えてしまいます。
そのため同OEMが必要としていたのは、海峡の両岸に精通した単一のパートナーでした。一方の岸には、モロッコの輸出手続きと自由貿易区の諸手続きがあります。もう一方の岸には、EUの自動車輸入コンプライアンスと特恵原産地規則があります。この両端で本当に強い事業者は多くありません。モロッコ→欧州航路では、この二つの専門領域の引き継ぎ点こそが、日数を失いがちな場所です。
当社のソリューション
Suaid Globalは、より速い海上サービスを探す代わりに、ハイブリッド回廊を設計しました。ルートは二つの短い区間に分かれます。近海フェリーがタンジェ・メドからアルヘシラスまでを2時間未満で結びます。そこから先は専用の陸上輸送が、アルヘシラスからサラゴサまでを約8時間でカバーします。ドア・ツー・ドアでは、急ぎ便が14時間未満、標準便が24〜36時間で、いずれも48時間という約束の内側に収まります。
設計全体を規定しているのは、この海峡横断の選択です。タンジェ・メドからアルヘシラスは、アフリカとヨーロッパを結ぶ最短の海上ルートです。近海フェリーはトレーラーそのものを運びます。片端でコンテナに詰め、もう一方の端で取り出すという作業が発生しません。これにより荷役工程が二つ減り、その前後の待ち時間もなくなります。
スペイン国内区間を陸送にしているのも同じ理由です。陸上輸送は本船の準備ではなく、貨物の準備が整った時に出発します。日ではなく時間単位で日程を数える場合、この差は決定的です。また、本船スケジュールではなく実際の組立需要に合わせて出荷を呼び出せるようになります。サラゴサまで陸送1区間で完結するということは、引き継ぎ点が複数ではなく1か所で済むということです。
関税は交渉で下げるのではなく、設計段階で外しました。ライセンスを持つ通関業者パートナーが、貨物ごとにEUR.1移動証明書を作成します。EUR.1は、EU・モロッコ連合協定に基づく特恵税率を適用させる原産地書類です。特恵は一度取得して終わりではなく、出荷ごとに申し立てるものです。証明書があれば部品は0%の関税でスペインに入りますが、なければそうはなりません。
最後のピースが国境そのものでした。同じ通関業者パートナーを通じてスペイン税関との事前通関手続きを整えたため、申告はフェリーが着岸する前に提出されます。これにより、到着後ではなく到着と同時に貨物を引き取れます。パートナーの陸運会社はトラックにGPSを搭載しており、Suaid Globalは各貨物を積み込み、出港、着岸、配送という固定のマイルストーンで報告します。工場はこのマイルストーンを基準に計画を立てます。
利用サービス
プログラム稼働開始までの流れ
オンボーディングは国境ではなく、船積地から始まりました。Suaid Globalは、タンジェ自由貿易区から貨物がどのように出るのか、どの輸出手続きが適用され、それぞれにどれだけ時間がかかるのかをマッピングしました。自由貿易区のステータスは輸出書類の内容を変えるため、この工程は前提として省略できません。最初の貨物が動く前にタイムラインを組み立てたことで、48時間という時計を推測ではなく実測で扱えるようになりました。船積地の輸出手続きに1時間使えば、その1時間は路上では使えません。
書類一式は、物量が動き出す前に固めました。各貨物には、コマーシャルインボイス、パッキングリスト、EUR.1証明書が付随します。インボイス上の品名と価格は、原産地書類の記載内容と一致していなければなりません。品名の不一致は、特恵の申し立てが疑問視される典型的な原因です。これをテンプレートの段階で片付けるほうが、国境で片付けるよりはるかに安く済みます。
プログラムはその後、固定の配船カレンダーではなく、組立計画からの呼び出しに沿って稼働します。Suaid Globalは呼び出しごとにフェリーの枠と陸送を予約し、工場へ確認を返します。通関業務も同じトリガーで始まるため、トレーラーがまだ積み込み中の段階から申告の準備が進みます。工程を順番待ちにせず重ね合わせているのは、逐次処理こそが48時間の余裕を静かに食い潰すからです。
調整の余地は最初から一つ組み込んであります。すべての部品に最速の手段が必要なわけではなく、全量を急ぎ便にすれば節約分が消えてしまいます。そこで回廊は二つのスピードで運用しています。ライン直結の緊急部品は14時間未満の急ぎ便、補充在庫は24〜36時間の標準便を使い、工場が貨物ごとに選びます。
可視化は例外の把握を軸に設計しました。工場はすべてのトラックを見張る必要はありません。必要なのは、貨物が枠に間に合わない可能性を早い段階で知ることです。マイルストーン報告により、海峡横断や路上での遅れが、まだ手を打てる時間のあるうちに表面化します。48時間の枠の中で輸送を時間単位で管理していれば、挽回の余地は十分に残ります。
成果
同OEMは48時間のJIT枠を達成し、本プログラムでは定時性を維持しています。これは回廊が無理をして届かせている目標ではありません。海上2時間、陸上約8時間であれば、48時間の中に十分な余裕が残ります。この余裕が、フェリーの枠を逃した時や国境が混雑した日を吸収します。余裕のない日程は、紙の上では速く見えても、最初の悪い一日で崩れます。
部品コストは、東欧のサプライヤー比で22%低い水準になりました。この数字を生んでいるのは、別々の二つの要因です。一つは、モロッコの低い賃金水準が、手作業で組み立てる部品の単価を引き下げること。もう一つは、EU関税がゼロであることがその引き下げ分を守ることです。輸入時に関税がかかれば、削減分は食われていました。この数字が残るためには、調達と物流が噛み合う必要がありました。
維持が必要なのは0%という関税の項目です。これが成り立つのは、すべての貨物がEU・モロッコ連合協定に基づく有効な原産地証明を伴っている間だけです。一度きりの承認ではなく、継続的な書類管理の規律ということです。通関業者パートナーは、先月のファイルがそのまま通用すると考えるのではなく、出荷ごとに確認をやり直しています。裏づけを欠いた申し立てが一つあれば、その貨物には即座に関税が戻ってきます。
本プログラムはその後拡大しました。同OEMは現在、タンジェからさらに3つの部品ファミリーを出荷しており、地中海をまたぐ区間はSuaid Globalが調整しています。実証済みの回廊に部品ファミリーを追加する作業は、新しい回廊を一から認定するよりはるかに小さな仕事です。ルートも通関プロセスもマイルストーン報告も、すでに動いているからです。再現可能な<a href='/industries/automotive/'>自動車物流</a>の設計が投資回収を生むのは、まさにこの部分です。